
◎リース会計の動向
2016年1月に公表されたIFRS第16号「リース」は、借手の会計処理について、使用権資産とリース負債を計上する使用権モデルにより、オペレーティング・リースも含む全てのリースについて資産及び負債を計上するとされており、2019年1月1日以後開始する事業年度より適用されています。
一方、日本基準は、リース会計基準、金融商品の減損に関する会計基準などにおいて、国際的な会計基準、すなわちIFRS会計基準と整合性のあるものとする方向で、基準開発が引き続き行われています。このうち、借手の全てのリースについて資産及び負債を計上するリース会計基準を開発し、2023年5月2日、企業会計基準委員会が企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等を公表し、現在は最終基準化に向けた検討が行われています。
◎財務諸表における気候関連及びその他の不確実性
気候変動は企業のビジネスモデル、キャッシュ・フロー、財政状態、業績に影響を及ぼす可能性があるため、投資家及び他の利害関係者がますます関心を示すトピックとなっています。そのため、国際会計基準審議会(IASB)は2020年11月、IFRS会計基準が既に財務諸表における気候関連及びその他の不確実性の影響を考慮するように要求していることを説明する教育文書を公表しました。それにもかかわらず、IASBの第3次アジェンダ協議からのフィードバックでは財務諸表における気候関連及びその他の不確実性に関するプロジェクトの優先順位は高いとされたことから、2023年3月に当該プロジェクトを作業計画に追加しています。さらに、2023年7月に上記の教育文書が改訂されています。
日本でもサステナビリティ情報に対する関心がより一層高まっており、気候関連及びその他の不確実性が我が国における企業の財務報告に大きな影響を及ぼすことも考えられ、どのように財務諸表が気候関連及びその他の不確実性に関する情報をより良く伝達することができるかというIASBの本取組に注視することは重要と考えられます。
本セミナーでは、IASBよりLinda Mezon-Hutter 副議長、鈴木理加理事、Patrina Buchanan理事、Bruce Mackenzie理事を迎え、IASBが取り組む活動・プロジェクトの最新動向についてご講演いただくとともに、「リース」及び「財務諸表における気候関連及びその他の不確実性」をテーマに取り上げ、我が国の主要な関係者の方々と議論を深めていただきます。
日本基準とIFRS会計基準の未来像を紐解く本セミナーに、是非ご参加ください。
15:30 | 開会挨拶 | 茂木 哲也(日本公認会計士協会 会長) |
15:35 | 講演 「IASBの最新動向」 | Linda Mezon-Hutter 氏(IASB副議長) |
15:55 | 講演 「基本財務諸表」 | 鈴木 理加 氏(IASB理事) |
16:15 | パネル・ディスカッション ❶
「リース」 ASBJは、2023年5月にIFRS第16号の要求事項の多くを採用する公開草案「リースに関する会計基準(案)」等を公表した。当公開草案について、日本の関係者はどのような懸念を持ち、IASBはその懸念をどのように見ているのか。 |
パネリスト Patrina Buchanan 氏(IASB理事) 佐藤 要造 氏(旭化成株式会社 経理・財務部 シニアフェロー) 後藤 潤 氏(株式会社格付投資情報センター 格付本部副本部長兼コーポレート4部長) 吉岡 亨 氏(PwCあらた有限責任監査法人 品質管理本部 パートナー) モデレーター 山口 奈美(企業会計基準委員会(ASBJ)常勤委員) |
17:00 | 休憩(10分) | |
17:10 | パネル・ディスカッション ❷
「財務諸表における気候関連及びその他の不確実性」 IASBは、財務諸表における気候関連及びその他の不確実性に関するプロジェクトを進めている。当プロジェクトの目的と気候変動に関する IASB の作業とどのような関係があるのか。また、日本の関係者は当プロジェクトに何を期待しているのか。 |
パネリスト Bruce Mackenzie 氏(IASB理事) 松本 道彰 氏(日本製鉄株式会社 財務部 決算室長) 井口 譲二 氏(株式会社ニッセイアセットマネジメント 執行役員 運用本部副本部長 チーフ・コーポレートガバナンス・オフィサー) 阪 智香 氏(関西学院大学商学部教授) 中條 恵美(企業会計基準委員会(ASBJ) 常勤委員 兼 サステナビリティ基準委員会(SSBJ)常勤委員) モデレーター 男澤 江利子(日本公認会計士協会 常務理事) |
17:55 | 閉会挨拶 | 川西 安喜(企業会計基準委員会(ASBJ)委員⻑ 兼 サステナビリティ基準委員会(SSBJ)委員⻑) |
2022年9月よりIASB理事。2023年1月より副議長に就任。2004年から2022年まではカナダ会計基準審議会に在籍し、後半の9年間は議長を務め、IFRS 会計基準の適用等に従事。それ以前は、カナダロイヤル銀行の主任会計士としてIFRS基準と米国GAAPの解釈と適用を担当。他にも上級職を歴任。
2013 年オンタリオ州勅許会計士協会フェロー。米国公認会計士(ミシガン州) 、CharteredGlobal Management Accountant(CGMA)、MBA(米国デトロイト大学)。
公認会計士。2019年7月にIASB理事に就任。就任前は、PwCあらた有限責任監査法人パートナー、IFRSリーダー、並びに、PwCネットワーク内のIFRSに係る意思決定機関の日本代表として、IFRS・日本基準・米国基準に係る会計相談・助言並びに大手多国籍企業やその他上場企業におけるIFRSへの移行や適用支援に従事した。
ASBJのIFRS適用課題対応専門委員会の専門委員や、日本公認会計士協会(JICPA)のIFRS対応専門委員会の専門委員並びに収益認識専門委員会の委員長も務めた。